”収納レススマートタウン”が、生活の自由度を拡大する
「大変! 明日、習字の授業があるのを忘れてた!!」
「ええっ、もう夜の10時よ。習字道具なんてトランクルームにしまってるから、取りに行くの大変なのに…」
こんな親子の会話は、誰でも親なり子どもなりの立場で、一度は経験があるのではないでしょうか。でも、未来の都市では、こんな心配もなくなるかもしれません。
トランクルーム市場は年々拡大しています。矢野経済研究所の調べでは、2020年度の収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム)の国内市場規模は、前年度比2.3%増の774億7,000万円、9年で約1.7倍に市場規模に拡大したとされています(※1)。特に2020年以降は新型コロナ感染拡大の影響で、リモートワークやオンライン学習が広がった結果、自宅にスペースを確保する必要が出てきて、利用が広がっている背景もあるとのことです。
こうしたトランクルームの近年のトレンドの一つは、宅配型のトランクルームサービスで、段ボール1箱単位で、収納物を格納してくれるサービスです。預けた品物をスタッフがすべて写真撮影などしてデータ化してくれたり、預けたモノを1点から取り出せたりするサービスもあります。
とはいえ、流通の問題もあり、返却にはある程度の時間がかかります。そのため、一度預けた荷物は預けっぱなしになることが多い側面もあります。もっと気軽に出し入れできるようにする仕組みづくりは考えられないでしょうか。
ヒントとなりそうなのは自動運転による配送業務です。宅配需要の拡大に伴いラストワンマイルの解決策として、昨今、注目を集めている小型のロボットによる自動走行による配送実験は、現在、日本国内でも、スマートシティなどの都市部を中心に実験されています(※2)。
現状は地域内の店舗や宅配の配送業務を担う形になっているこれら小型ロボットを、トランクルームの収納・取り出し業務に応用すれば、24時間365日の対応も可能になります。スマートシティの一角に地域住民全世帯分のトランクルームを準備。住民は段ボール単位で荷物を収納すると、トランクルーム側は内容物を記録。取り出したいものを申請すれば、1時間程度で自宅までロボットが配送してくれる。こんな仕組みは簡単に作れそうです。
こうした24時間365日対応のトランクルームがあれば、自宅の収納が不要になります。収納を極端に減らした住居はその分、生活空間の自由度も高くなります。また個々の箱に収容物を記録できることで、欲しいものを欲しい時に取り出せるようになり、押し入れの奥を引っ掻き回す必要もなくなるので、手間も時間のロスも亡くなります。また、引っ越すときも荷物の多くは収納されているので、より移動の自由度も高くなります。これからのスマートシティには収納の無い家々と、巨大なトランクルームの建物がセットで建設されるようになるでしょう。
※1)矢野経済研究所「レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム市場に関する調査を実施(2020年)」より
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2685
※2)国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構ロボット・AI部「『自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現 に向けた技術開発事業』の進捗状況について」より
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosoko_robot/pdf/003_04_00.pdf