「視点シェアリング」が著名人のサイドビジネスに
小学生のころ公園で写生大会のことを思い出してください。同じ公園で絵を描いていても、池の水鳥、ジャングルジム、草木、というように描かれる対象は様々で、人によって視点が異なることに驚かされます。
同級生はともかく、有名アーチスト、成功した起業家、卓越したアスリートなど著名人の視点を拝借して、彼らがどのように世界を眺めているのか見てみたい人も多いでしょう。
未来社会では、著名人が自分の視点をシェアする「視点シェアリング」ビジネスが生まれるかもしれません。「視点シェアリング」ユーザーは、著名人の視点を通じて、自分にはできない体験を楽しみ、視点のユニークさから新しい気づきを得ることが可能です。
視線に連動して動くカメラとスマートグラス、低遅延な通信環境が整えば、リアルタイムで著名人の視点を共有することは十分に可能でしょう。
マイケル・ポランニーによれば、人間の知識(ナレッジ)には「暗黙知」と「形式知」に分類されます。言語などの明示的・形式的表現での伝達が可能な「形式知」に対して、「暗黙知」は、明示的に表現できない主観的で、身体的な実感から得られる知識とされます。
膨大なデータの解析と通じて、デジタル技術による知識の「形式知」化はどんどん進んでいきます。一方で接客、工芸、料理、などの熟練者が属人的の持っている有益な「暗黙知」が、伝達手段がないという理由だけで、“無いもの”にされ次代に継承されないリスクも生じてくるでしょう。
「視点シェアリング」を使えば、職人の匠の技を、当人の視点を介して直感的に伝えることができます。著名人のビジネスだけでなく、「視点シェアリング」は「暗黙知」の継承という社会的な課題解決にも活用できるかもしれません。