会話・対人関係のユニバーサルデザインが進む
会議や何かを決める際に、話の筋が通っているかどうかより、声の大きい人や、年配の人、男性、立場が上の人の意見が通ってしまうなどと感じたことはありませんか?
この10年ほどで、社会の様々な領域で、年齢や性別、社会的立場の上下が影響しない、対等な関係の中で議論や意思決定をしたり、フラットな組織のあり方を目指す例が増えています。最近注目されているマネジメント手法の「ティール組織」は、経営者や上司が社員を指示・管理せず、皆が対等でフラットに協力しつつ実績を上げています。「1on1」という、部下の行動と学習を促進するコーチング手法を耳にした人も多いでしょう。
子どもの教育やスポーツ指導の場でも、一方的な命令ではなく子どもや選手との対等な関係、対話の中で力を引き出す指導が広まっています。環境問題や社会課題に取り組む人たち、NPOの方々やイノベーションを志向するビジネス層の間では2000年頃から様々なワークショップ等を通して対等な対話の作法が広まっていましたが、今、それが社会全体に徐々に、確実に浸透してきているのです。
対等な対話の作法ですが、例えば数十歳も年下の人が相手の世間話でも丁寧語を崩さない。あてこすりや皮肉を言わない、マウンティングもせず、和やかに話す。人の話をよく聞く。自分ばかり話さない、人の話を頭ごなしに否定しない、などのイメージでしょうか。安心安全な会話・対人関係の場を作り、立場の弱い人でも対等に参加できる社会を創り上げるための、いわば「会話・対人関係のユニバーサルデザイン」が広まりつつあるのです。
20世紀は、暮らしの周りの身体面の危険や苦痛はかなり減った時代でした。感染症で死ぬこと、熱さ寒さのつらさ、暮らしの中の事故や怪我等は激減しました。障がいのある人の社会参加もある程度向上した時代でした。21世紀は、これに加えて、心の面でも安心安全が確保され、立場の弱い人も対等に社会参加できる時代にできたらいいですね。