【第四回】お祭りの活性化はコミュニティーの活性化

お祭りが抱える課題

市原:今回は、次の2つお祭りを取り上げ、その再活性化を自由に考えたいと思います。
●主催者の高齢化と子供の参加減少に悩む、茨城のねぶた「笠間のまつり」
●“ふんどし”スタイルを楽む参加者を募りたい「常陸大宮の裸祭り」

高齢化等による参加者減少への対策

加藤:「笠間のまつり」は、錦糸町の河内音頭(第三回)が参考になります。青森の模倣にとどまらない、地域のオリジナリティーの創造です。これについては、笠間市は稲荷神社が有名な町でもあり、ハネトの衣装にキツネの耳を付ける風習が広がりつつあります。

Photo Provided by Omatsuri Japan

市原:地域のアレンジが、笠間のねぶたとして広がっていけば良いですね。この地域には、悪態まつりがあります。罵声を浴びせ合うようなお祭りといわれていますが、 “観る”ねぶたの青森に対し、“発散する”ねぶたは笠間と、棲み分けは考えられませんか。

黄太郎:そもそもねぶたは、源平合戦が題材にされることも多いですが、もっと多様性があって良いはず。近年、映画をテーマにしたものも見られるようになりましたが、子供や様々な人からのアイディアを取り入れ、地域や日本らしいものを模索してもらいたいです。例えば、アーティストやそれを目指す人たちの表現の舞台にしてもらうことも考えられます。

黄太郎:更に、多様な参加者の呼びかけも大切です。青森のねぶたは、企業ロゴが一台一台に付いている他、ハネトにも企業の人達がいて、お祭りの中で融合しています。

加藤:青森のねぶたでも、検証が必要かもしれません。企業から協賛を得る努力をしてきましたが、それが毎年の当たり前のことになり、企業との関係が金銭の授受だけなっていないか。ロゴは露出していても、それが現在の企業にとって、どのような意味があるものなのか、コミュニティーとの関わり方はどのようになっているのかなど。

市原:住民としての企業と向き合っているのか、その検証ですね。

黄太郎:ねぶたの話に戻ると、その題材は企業の創業者の顔でも良い。なぜ、みんな同じような顔になっているのでしょうか。多様なねぶたを見てみたいです。ただし、ねぶたを製作する作り手の数が少ないとも聞きます。そうであるなら、新たな製作手法も検討してはいかがでしょうか。

市原:そうですね、新たな手法によって、自由な造形のねぶたが製作できれるのなら、コミュニティーの魅力発信につながるのかもしれません。

黄太郎:私は、SNSでお祭りの参加者を呼びかけこともあるのですが、ねぶた祭りには若者からの反応があります。彼らもねぶた祭りに行ってみたいのです。ただし、青森は地理的な距離があり、良く知らないお祭りでもあるため、一緒に行ってくれる人が欲しい、それが現状です。そのため、身近で、それも自由で直感的なねぶたを楽しめるのなら、若者は集まると思います。ぜひ、地域コミュニティーの魅力を開発・発信し、お祭りをきっかけに多くの若者にアピールしていただきたい。

奇抜な風習等の祭事への対策

市原:次の「常陸大宮の裸祭り」を考えましょう。

加藤:こちらは、ふんどし姿になってくれる参加者の減少という悩みです。普段、人前で裸になることはないため、恥ずかしがってふんどし姿になってくれないようです。一方で、黄太郎さんや弊社メンバーにも、ふんどし姿を面白がる人もいます。この人たちにアプローチできていないというミスマッチもあると思いますが、それ以外に解決策はあるのではでしょうか。

市原:それなら、ふんどしを地域のシンボルとし、ふんどしの存在が自然な環境作りはいかがでしょう。例えば、駅からの会場までが、ふんどしで埋め尽くしても良い。この時期はふんどしが軒先にあって当然で、あ~ふんどしが舞ったね、そろそろお祭りだね、という雰囲気作りです。

黄太郎:ふんどし電車やバスも良いですね。これらは観光資源になりませんか。

市原:ふんどしメッセージはどうでしょう。メッセージが書かれたふんどしが、風に吹かれる姿も絶妙な絵になります。お父さん、奥さん、遠くの息子へのメッセージ、そういう気持ちの受け皿が、たまたまふんどしというもの。ふんどしへ愛着も生まれるかもしれません。

黄太郎:環境の他、端的に若者への資金サポートも考えられます。お祭りの参加には費用が必要です。そこで、ふんどしを参加者にプレゼントするのはいかがでしょう。

市原:提供するのなら、少なくとも開催会や日付等を記したいです。それなら、コレクションニーズも生まれるかもしれません。

黄太郎:類似事例は鳥取の蛸舞式神事です。この場合は、まわしなのですが、まわしに判子が押されます。そのため、この判子の数が沢山ある人がベテランと見られるのです。

市原:箱根のたすきのように、チームでふんどしをつなぐ発想はいかがでしょう。毎年チームの誰かが参加するのなら、参加者も安定します。

澁川:チーム参加の仕組みも作りたいです。悪さを一緒にやった奴は親友にもなるように、チームにも良さがあります。恥ずかしい体験を一緒にやることは一体感を生み、かつ仲間との思い出にもなります。一人で参加するよりも、そのコミュニティーとの絆も強くなるのではないでしょうか。それもコミュニティーの活性化だといえます。

コミュニティーとのつながり

村越:お祭りの活性化は、やはりコミュニティーの課題だと思います。今は個人の発信が非常に多く、何でもオープンになるため、秘めたもの、秘密の儀式感が少なくなっている印象です。秘密の儀式感も、コミュニティーと個人との結びつきを生むと考えます。

黄太郎:蘇民祭には、外部の人も儀式に関われるシーンがあります。体を清めた後に蘇民袋を奪い合うのですが、その瞬間は暗闇です。しかし、これを撮影をしようと沢山の報道カメラマンが陣取っています。面白いのはここからで、カメラマンは暗闇だと映像が撮れないため、照明を点けようとする。そうすると“電気消せー”の掛け声が飛び、場が盛り上がるのです。この電気消せがハッシュタグになり、電気消せと書かれたTシャツを着ているチームまでいます。この電気消せは、お祭りのコンテンツの一つなのです。

村越:訪れた人にだけが見られる部分があると、参加したくなります。電気消せは、外部の人は禁止というお祭りの核心部分であったはずです。ただ、ここに役割が生まれ外部の人にも開放された。少しだけ伝統を変えたのですね。

市原:お祭りにおける役割は、積極的な参加やコミュニティ-との絆の形成につながります。電気消せは、その瞬間はお祭りのヒーローです。このような、誰にでも簡単に担える役割から、コミュニティーを開放し、その活性化を狙うことも一つのアプローチでしょう。

お祭りの活性化に向けて
地域のオリジナリティ作り
お祭りを模倣しても構わないが、模倣の本家とは異なる地域のオリジナリティー作りが重要である。
奇抜なお祭りでは環境作り
ふんどしなど奇抜なスタイルは、それ自体が見慣れないため、それが自然となるコミュニティーの環境作りも解決策である。
開かれたコミュニテー作り
訪れたことで得られる経験作り、外部に開放された役割によって、開かれたコミュニティーが考えられる。
 

 (第四回了:第五回は「お祭りテクノロジー」)

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