自分らしさサステナビリティ
「サステナビリティ」という言葉を聞いて皆さんがパッと思いつくのはどんなことでしょうか。おそらく多くの人が「環境意識」「地球温暖化」「SDGs」「人権」など、地球規模、人類規模のテーマではないでしょうか。社会全体として取り組むべき人類共通の課題意識として、この数年でかなり定着してきた言葉と言えますが、本来、「サステナビリティ」とは、「sustain(持続する、保つ)」と「-able(~できる)」を組み合わせた言葉で、日本語で「持続可能性」もう少しかみ砕くと、「保ち続けられること」という意味です。
デジタルデバイスが身近になったことで、要不要に関わらず情報が常に提供され続け、そして常に誰かと繋がっているのが当たり前になった現代。人付き合いや体験を通した「自分らしさ探し」が流行していた平成の頃と比べると、「自分らしさ」は圧倒的に見つけやすくなりました。関わるコミュニティに応じて何タイプもの自分を使い分ける中で、自分らしくいられる居心地の良い空間や人間関係を重視する人が増える中で、見つけた自分らしさを保ち続けられること=「自分らしさサステナビリティ」という概念が広がってきているように感じます。
電通が2023年5月に実施した「心が動く消費調査」によると、「付き合うメリットの感じられない人とはなるべく会わないようにしている」かについて、「あてはまる」と答えた人の割合は全体で59.3%。およそ6割もの人が、人間関係にメリット・デメリットという判断基準を持っていることが明らかになりました。年代別にみると、女性30代(63.6%)・女性40代(64.9%)が他年代と比べて高い結果となりました。人付き合いに関しても自分にとってメリットがあるか、負担がないかで考える判断軸が、人々の中に芽生えているのかもしれません。
また、「1年前と比べて、一人で過ごす時間を大切にしたい」という気持ちが「増えた」と答えた人は全体で30.1%でした。こちらも年代別にみると30代~40代の女性が顕著で、30代女性(36.4%)、40代女性(43.0%)と他と比べてかなり高い結果となりました。周囲の目を気にするよりも、いつも通りの自分らしさを保ちたいという「自分らしさのサステナビリティ」は確実に定着し始めています。
少し先の未来に目を向けてみましょう。「デジタルツイン」「メタバース」「テレイグライフ」など、自分の世界を拡大して繋がりを広げてくれるものが次々と一般化し、日常に定着していきます。便利に、自分の好みに合わせた心地良い暮らし方ができる一方で、わずらわしいものや自分らしさを乱すものに対してのネガティブな意識は、今よりも高まっているのではないでしょうか。
この「自分らしさサステナビリティ」は、未来を考えるうえで欠かせない視点となっているでしょう。
※「心が動く消費調査」(2023年5月調査)https://www.dentsu.co.jp/news/item-cms/b2023024-0831.pdf