SNSヒーロー・ヒロインになるための教育産業が伸びる
“インスタ映え”という言葉に代表されるように、話題受けするか、見栄え良く見せるか、といった表現に個人が工夫を寄せる時代になっています。こうした事象に個人が関心を傾けるようになった背景には、もちろんSNSの普及があります。個人が手軽に情報発信でき、評判が良ければ拡散されるというこの特性無くして、個人による情報発信を他者が評価するという仕組みは生まれなかったでしょう。こうしたメディアの民主化は、かつてマクルーハンが言った“グローバル・ヴィレッジ”の実現と言えるかも知れません。
しかし、一見誰でもが参加可能な民主的なメディアには見えるものの、実は多数の支持を得ることはそうそう簡単な事では無いことに気がつきます。
“映え”て、人気を得るためには、何らかの工夫が必要とされますが、その工夫もいくつかのタイプに分類することが出来るでしょう。
ひとつは、「努力型」です。はじめしゃちょーを始め、フィーッシャーズなどトップ・ユーチューバーの投稿数は年間で軽く250本を超えており、ほぼ2日に1本の割合で動画がアップされています。インスタグラムで人気の高い#弁当ジャンルでも、ほぼ毎日の継続写真アップが、結果として人気の獲得に繋がっています。絶え間ない努力が人気を支えているというタイプです。
二つめは、「加工型」です。さまざまな写真アプリに代表されるように、お手軽に誰でも、アプリ加工により見栄えを加工し、“盛る”ことが可能な環境が整っています。そうしたアプリを利用することにより、映えることを狙うというタイプです。
そして三つめは「購入型」です。これは、街場のパフェやホットケーキ、サンドイッチなど見栄えの良い食品を購入して、SNSにアップするという、ある意味でお手軽な“映え”の方法だと言えるでしょう。
このように見ていくと、一番人気を得ているタイプは、「努力型」であり、結局のところ、メディアの民主化に見えた現象も、それ相応の努力無くしてはメディアとしての価値が得られないという結果となっていることに気づかされます。
またそうした形で得たSNSヒーローが、マスメディアで積極的に紹介されるなど、マスメディアによるSNSの取り込み現象も見られるようになっています。
今後も、人々の自己承認欲求の高まりに応える形で、SNSを通じた情報発信は拡がっていくことでしょう。SNSメディアは、すでに旧来のマスメディアと肩を並べるだけの産業規模となっているのです。産業が伸びるのであれば、当然それに派生した関連産業が生まれてきます。
SNSスキルテクニック向上のための教育訓練事業や、能力向上のためのスクールビジネスが今後は拡がっていくことでしょうし、既存のメディアやビジネス領域からも積極的にSNS関連分野への参入が今後は広がっていくことでしょう。個人の「努力」であったものが、今後はスキル化されていくことでしょう。