情報技術の発展でメディアは“デジタルペイン”対策が求められる
「ゲーム障害」とは、オンラインゲームなどに過度に没頭することで人間関係や仕事、学業などの日常生活に支障を来す状態。世界保健機関(WHO)が5月、新たな依存症として正式に国際疾病に分類したことで話題となりました。
国立病院機構久里浜医療センターが行った「ゲーム障害」に関する実態調査によると、10代と20代の約12%が休日に6時間以上ゲームをしており、6時間以上の人のうち、「腰痛や頭痛など体の問題があっても続けた」のは40.5%。「睡眠障害や憂鬱(ゆううつ)など心の問題が起きても続けた」人も37.2%に上ります。
デジタル情報技術の発展で便利な世の中になった反面、ゲームという限られた分野ではありますが、デジタルによる心身の苦痛、いわば“デジタルペイン”が生じている現実を我々は真摯に受け止めるべきでしょう。
VR、AR、MRといった現実とデジタル情報を融合する技術、AIといった人間の意思を代替・補助する技術など、人間と情報技術の相互乗り入れはますます進んでいきます。未来社会においては、ゲームに留まらない領域で、今以上に人々に“デジタルペイン”が生じるリスクが高まっていくと考えられます。
厚生労働省ではゲーム障害に対応できる医療人材の育成に乗り出すなど、国内でも治療体制の整備が進められています。“デジタルペイン”の社会的認知が高まると、治療体制の整備だけではなく、サービス提供者側にも、利用者に“デジタルペイン”が生じないサービス設計が求められてくるでしょう。
デジタルペインの解消には、技術単独ではなく、技術と人を包括的に捉える新しい知見やノウハウが求められます。長時間利用や過度な没入を抑制するインターフェースの実装は当然のことですが、さらなる情報技術の発展により、“デジタルペイン”を、デジタルで治す“デジタルメディシン”が生まれてくるかもしれません。
ゲームであれ、メディアであれ、今までは利便性や娯楽性(加えて収益性)を主眼にサービス設計がなされてきました。これからは人々の“デジタルペイン”を緩和する、“デジタルメディシン”が実装されたサービスが新しい価値を生み出すかもしれません。