A愛スマート・キッチンライフ

「今日も1日在宅でリモートワーク、ランチと夕食のメニューは何にしよう?」

コロナを機に私達のワークスタイルは変化し、それと共に食に対する意識や行動も大きく変わりました。外食は特別な人との貴重な機会のみとなり、自宅の食事時間をより充実させたい(しかも簡単に!)と思うようになった人も多いことでしょう。

実際に、食材のオンライン発注、デリバリやテイクアウト、調理家電の活用など、家ナカの食を支える選択肢は多様になり、実際に、利用や売上も増加しています。安全で、健康を維持して楽しく生きたい、という欲求もさらに高まっているのではないでしょうか。

そんな人々の欲求に応えるべく、食をめぐるテクノロジーも日々進化しているようです。

例えば、血液や遺伝子等の生体データを送ると摂取すべき栄養素や運動などをアドバイス

してくれ、血糖値を常にモニタリングするサービス。その日の気分に合わせてお茶を調合してくれるティーポット等、自分の健康や気分に合わせたサービスも登場しています。※1 近い未来には、パーソナルAIが明日のあなたのスケジュールに合わせ一日の食メニューをアドバイスし、食材をドローンがデリバリしてくれることも日常的になるかもしれません。

では、食材ではどんなイノベーションが起きているのでしょうか。近年急成長しているのが、代替プロテイン(代替肉)市場です。2050年に、世界の人口は90億人に達するとされ、世界の肉の消費量は76%増加されると予測されますが、肉の供給を増やす事は地球環境に悪影響を与えるとされています。代替肉で最も高度なレベルは、テクノロジーの力によって動物の幹細胞から人工的につくられる「培養肉」です。培養肉は、栄養価も高く、感染症などの心配もないので安全性も高く、環境や動物に危害を加える事なく作る事ができます。現時点ではまだコストも時間もかかりますが、培養肉で作られたステーキ肉がスーパーに並ぶのは10年先程遠い未来ではないと言われています。※2

そして「料理を作る」という点からみると、人間や調理家電ではない料理人=“フードロボティクス”による新しい料理作りの技術が開発されています。3Dフードプリンタもその一つです。栄養価の高い食べられる素材をインクとして使い、立体的で複雑な造形の食材を作る事ができるため、よりその人の体質や嗜好に合った食事を作ることが可能になります。

将来より手頃な価格で入手できるようになれば、一家に一台3Dフードプリンタで介護食を作ったり、自分の好きな色や形のお菓子を自由自在にデザインして楽しむ、という事もできるかもしれません。※3

このように、未来の食生活では、食事メニューの選択から料理を作るまでの一連のプロセスに、今とは全く違う選択肢や技術が出てくる可能性があります。

AIの指示通りのメニューで、健康にも環境にも良い食材を使って、しかも美味しい、ロボットが家族一人ひとりの好みの食事をプロ並みに仕上げてくれる・・・とても効率的で魅力的です。しかし家族や他の誰かがあなたの体調や好みを考えながら愛情こめて調理し、誰かと同じものを分かち合いながら食べるという食卓の風景はこのテクノロジーの進化と共に消滅してしまうのでしょうか?

例えば、忙しい日常生活では、AIやロボットの力を借りて効率化してもいいけれど、たまにしかない誕生日やパーティー等のハレの日には、やはり愛情や心のこもったものが食べたいという人もいるでしょう。そんな時は、AIの知恵や技術を借りながら、人間自身がプロ並みの料理を自宅のキッチンで作れるということも出来るようになるかもしれません。

テクノロジー(AI)と愛情がほどよく融合された未来の食生活、未来のキッチンの登場を期待したいと思います。

※1:https://bae.dentsutec.co.jp/articles/foodtech-02/

    https://www.gizmodo.jp/2017/01/habit-dna-custom-made-meals.html

※2:https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/sciencewindow/20191024_w01/

Netflix「世界の今をダイジェスト」₋「食肉の未来」

※3:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00561/00002/

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