モジュールを統合する新しい教育システム

2014年から2018年にかけて米国のMBAプログラムの数が10分の1近く減少し、マネジメント教育のあり方が大きく変わりつつあります(Association to Advance Collegiate Schools of Business調べ)。大企業が独自に社員の教育に巨額の資金を投じるようになっていることにくわえて、オンラインを中心とするモジュール教育の浸透が背景としてあるようです。もともとプログラミングの用語であるモジュールは社会に広く浸透している考え方で、いまやあらゆる製品サービスがさまざまなモジュールの集まで構成され、世界的な分業体制によってひとつの商品サービスとして組み合わされています。 

 そして、いまモジュール化は学校や企業などの人材教育に及んできています。かつては統合された同一のプログラムをみんなで受けるという授業が普通でしたが、いまではEラーニングによって自分に必要な知識を習得するためのコースも選択できますし、受講履歴やニーズをもとにアドバイスもしてくれます。子供の通信教育においてもタブレットが導入され、自分にあったコースを選択できるようになりました。小学校ではモジュール授業と呼ばれる10-15分程度の短い時間の授業を導入するところが増えており、子供が短い時間で多くの経験を積むのに役立っているようです。 

 モジュール化の問題点として挙げられるのは、モジュール分割はそれが進みすぎると統合化が難しくなること、散漫に知識をつまむだけになってしまうと本当に実践的で役に立つ知や教養が身につかなくなってしまうことです。一方で、画一的で統合的な教育プログラムは同じような会社人間を作るには有効でしたが、一人ひとりが個性を伸ばしながら才能を最大化することを求める時代へと移ってきています。いま求められているのは、モジュール化されたプログラムを統合して、実践可能な「知」「行動力」「リーダーシップ」を生み出していくための新しい教育のあり方です。 

 それを統合するのにAIは役に立つと思いますが、それだけでは十分ではありません。オーガナイザーのような存在が必要で、そのような役割を担う専任の人材が企業や学校にいて、AIを使いこなしながら、カスタマイズされた個別アドバイスをしていくことで、より大きな成果をあげられるように思います。モジュール化の良さを活かしながら統合機能を強化していくことが新しい教育の主流になってくると思われます。そのような教育プログラムを提供し「知」「行動力」「リーダーシップ」を持つ人材を育成できるかが学校や企業の競争力につながりそうです。 

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