「モバイルヘルスケア」は、健康をアウトソーシングする

SF作家伊藤計劃の小説「ハーモニー」では、『生府』という統治機構が高度な管理医療社会を構築した姿が描かれています。「ハーモニー」の『生府』は人々の生命そのものを超管理社会の下に管理するディストピアとして描かれているのですが、健康情報をクラウド上で集中管理するサービスという視点に立つと、非現実的と切り捨てることはなかなかできなさそうです。

すでに現代の日本でも、健康管理のためにfitbitやAppleWatchなどを用いて日常的に血圧や歩数計測などの健康チェックを行っている人はすくなくありません。こうした日常的に健康情報を取得する技術は、ヘルスケアとITの融合した「ヘルステック」として昨今、急速な盛り上がりを見せています。

国民皆保の制度がない自由診療社会のアメリカでは、ヘルステックのスタートアップがいくつも登場しています。その中には、心拍数や血圧、体温、身長体重などの蓄積したデータをもとに健康アドバイスを提案しつつ、病気の兆候が見られた場合、速やかに病院に予約して、医師が診療するというサービスも登場しています。医師は蓄積したデータをそのまま用いることができるので、その場の判断に頼らずにより正確な判断を出すことができます。

さらにはセルフチェックできる健康検査も、今では少量の血液や尿検査、スマホを使った眼底検査などに広がりつつあります。こうして得られる自らの身体情報を随時クラウド上にアップロード、それを元に医師や専門家、時にはAIが専門的なアドバイス、病気の兆候が見られたら先回りして医療機関の予約など、人々は自らの健康までもアウトソーシングしていく時代になっていくかもしれません。

 

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