【第三回】お祭り企画はコミュニティー作り

起源の必要性

市原:今回は、新たなお祭りの企画を検討します。参考になりそうなお祭りはありますか。

黄太郎:「富山の火牛の計レース」を紹介します。これは、参加が比較的容易なお祭りです。火が付いた藁製の牛を乗せた台車を、チームで押してタイムを争う競技性があります。火のついた藁の牛は、それだけで謎なのですが、そこに必死な大人たちが加わる、絶妙な面白さがあるのです。
Photo Provided by Oyabe City

市原:このお祭りでは歴史的な起源も語られていますが、やや強引な印象を受けます。起源に関連し、二つ紹介させてください。はじめは「北海へそ祭り」です。へその理由は、富良野市が北海道のほぼ中央にあるからというものです。同市は、その後へそ町協議会を開催し、自治体同士の交流も作りだしています。

次は「すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り」です。錦糸町と河内音頭の間には直接の関係はありません。偶然住民が研究していたことで起こり、周囲を巻き込み広がっています。

これらから、歴史的な起源やお神輿などの形式がなくても、お祭りが生まれることがわかります。ノリや模倣から始まって良いのです。ただし、いずれも独自に進化させています。立ち上げた後、どのように地域に合わせるのか、これこそが重要なのです。

加藤:高円寺の阿波踊りや浅草サンバカーニバルも模倣から始まっています。

黄太郎:お祭りでは、起源を真面目に考えても仕方ありません。お祭りの主催者へのインタビューでは、必ず起源を伺います。しかし、3割くらい「わからない」という回答です。毎年開催しているから、600年続くからなど、このようなお祭りが全国にあります。結局、みんなが楽しめるものが続いてきた、これが実態でしょう。ただし、いずれも時代に合わせて変わっているのです。

お祭りの拡散

村越:お祭り企画の発想として、組み合わせは有効です。例えば、お寺を舞台にした音楽祭などがあります。元々お寺は、明治以前、歌や踊りなど祝祭の空間でした。私は、歴史のあるお寺の本堂で、アラブ音楽と雅楽の音楽祭を経験したこともあります。このような、歴史的・文化的な空間やその儀式等の組み合わせた企画も考えられます。

市原:歴史的な建造物は映像的にも美しく、SNSにも合います。

黄太郎:SNSに適したお祭りに「豊浜鯛まつり」があります。鯛の山車や、鯛の被り物があり、良い写真が撮れます。
Photo Provided by Minamitita Town

市原:少し変わったイベント、大阪新世界の「セルフ祭」の紹介です。これは、地域外のアーティストが自由な表現活動を続け、そのエネルギーがお祭りに昇華されています。セルフ祭では、企画から地域外の人物が関わっています。また、活動をきっかけにアーティストと住民の交流が生まれ、商店街も元気になりつつあるようです。このような新しい発想を持つ人々を巻き込み、情報の拡散と新たなコミュニティーを作りを両立するスタイルも、一つの視点になるのでしょう。

企業の関わり方

市原:企業主体のお祭りに、丸の内の「企業対抗綱引き」や、三井不動産が日本橋の再開発の中で福徳の森を再生した例があります。

Photo Provided by Mitsui Fudosan Co., Ltd.

加藤:新宿三井ビルの「のど自慢」もあります。これ超ガチです。紙ふぶきも舞うのですが、これはシュレッダーの紙の再利用です。

市原:様々ありますね。これらは、いずれも地域住民としての企業です。お祭りの多くで、企業はスポンサーもしくは1参加者にとどまっています。しかし、この場合の企業は短期的な視点で支出を捉えがちです。一方、企業に住民の一人として主催者に入ってもらい、地域と意見交換が活発に行われるなら、長期的視点に立った協力関係も作りやすくなります。

澁川:企業参加を真剣に考えないと、自治体頼りになってしまいます。財政に余裕がある自治体は面白い企画もできますが、多くのイベントは予算がなければ自走しません。そのためにも企業の力は必要なのです。

ターゲットとする若者

澁川:第一回で「族(または属)」の話に触れましたが、最近の若者は族から遠ざかろうとしています。彼らは、縦ではなく横のつながりを重視し、自由なつながりを求めているため、地元や家族にすら固着する必要性を感じていないのです。

この族(属)から遠ざかろうという姿勢は、土着的なものには危機ですが、それ以外ではチャンスとなります。これまで知らなかったお祭りも、参加したいとさえ感じられるなら、地域を超えた若者が集まるのです。

もう一つ注目すべき点は、脱・ゆとり世代の存在で、彼らは表現する年齢に入ってきました。今は、学校の教育課程でダンスの授業があります。踊ってみたは、これまでも動画投稿サイトのメジャーコンテンツです。しかし、今後は踊りが流行ったから広がるものではなく、踊れる人が増えたことで、日常的なコンテンツになるでしょう。踊りは、彼らの表現手段の一つなのです。

市原:では、彼らを巻き込むお祭りの企画とは、どのようなものでしょうか。

澁川:第二部のUSJの事例は、すごく面白いです。東西のテーマパークで考えると、ディズニーランドは彼らの世界を覗き見する楽しさを、提供しています。一方のUSJでは、顧客をその世界に巻き込もうと考えているようです。ここにヒントがあると思います。

市原:ディズニーランドのパレードは、顧客とパークに一線を引くことで変わらない世界観を提供しています。USJは、その世界観への直接参加です。もしかしたら世界観が揺らぐことも起こります。しかし、楽しむことが本質であるお祭りの視点からは、この世界観の揺らぎさえ肯定的なのかもしれません。

新たなお祭り

澁川:これまでの地域コミュニティーは、多くが地縁や血縁などで結びついた共同体でした。それが、都市化により利益や機能で結びついた新たな機能体に変わっています。コミュニケーションツールなどの進化は、この転換を容易にし、さらに視覚化しています。

村越:シェアハウスが、地域コミュニティーになる例も聞きます。別々に暮らしていても、食事や相談事など時々に集まるバーチャルなものです。

市原:地縁等に紐づかないバーチャルなコミュニティーの例であれば、先のセルフ祭があります。
Photo Provided by Keita Kusaka”Self-Matsuri”

澁川:このようなお祭りは、賃貸住宅が多い都市で成立しやすい。アメリカは引っ越し社会で、人々の生活が固定されておらず、ニュートラルなフェスティバル系のお祭りが中心です。持家が多いといわれる日本でも、賃貸住宅の多い都市ならセルフ祭も成立するはずです。

加藤:セルフ祭はかなり個性的で、アートイベントに近いです。焼き物の町なら焼き物フェスティバルで、全国の焼き物を集めることもできます。

村越:人々が移動するお祭りに、マラソン大会があります。日本中で開催され、結構同じ人達が走っています。ただし、演者が同じでも問題ありません。中世の踊り芸者は、全国を巡る漂流民でした。この芸能民が全国を巡り、お祭りを通し地域をつなげていたのです。

市原:お祭りは、コミュニティーと密接な関係があります。やはり、お祭りの企画とはコミュニティー作りです。コミュニティーを盛り上げるために、どのような交流を生みたいのか、またそのコミュニティーの熱量が集まるものに何があるのか、これがお祭り企画の第一歩なのでしょう。

新たなお祭りの企画に向けて
人々の熱量が祭りを作る
新たなお祭りに、歴史的起源はいらない。起源やフォーマットがなくても、人々の熱量が集まるものは、お祭りになる。
主催者もオープン化
住民に限らず、企業も主催者に巻き込む。さらに、コミュニティーの在り方次第では、主催者や企画アイディアすら域外に求めて構わない。
表現者としての参加者
参加者は観光客に限らない。舞台を用意し、表現者としての参加も考える。

 (第三回了:第四回は「お祭りの活性化はコミュニティーの活性化」)

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